*久保枝・夏葵
(エターナルオヤブン・b04791)
*篠江・疾風
(風追い・b17556)
*栗栖・タケシ
(紅の貴公子・b21362)
*篠江・つぐむ
(論理演算・b31341)
*篠江・港
(ラジカルスクランブル・b41572)
*篠江・晴杞
(プレデターゲーム・b41574)
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この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、篠江・翔が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は篠江・翔に、著作権は絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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台風が直撃中だ。
ここ最近は天気も悪くて走りにでれねーな。ちっ。
そういや、晴れしずにつぐむが入団してたな。
ホント…どこまで増えるんだ…俺たち兄弟は。半数以上晴れしずにいるんじゃねーか?
ん、背後が何かSS載せろってうるせーな。
は?俺の過去!?んなもん、別にどーだっていーだろ;
ちっ…仕方ねーな。
「俺も兄貴みたいに自慢出来るもの、欲しいなっ」
「疾風は俺なんかよりずっと頭良いし運動神経だって良いじゃない…羨ましいよ」
そんな会話をしたのは、小学校の時に出された作文の宿題がきっかけだった。
テーマは「将来の夢」とか、そんなようなだった気がする。
夢…。
勉強は、親がちゃんとしろと言うからしてきた。
運動は元々好きだったからうちこめた。
でも、夢とは違う気がした。そんな時浮かぶのは、やはり兄の姿で。
兄の歌は好きだ。…もしかしたら、歌っている時の兄の表情が好きなのかもしれない。
「夢…夢…」
「疾風は、走るの速いじゃない?足を活かしてさ、陸上選手とかになろうとは思わないの??」
タイトルだけ書いた作文用紙をしばし見つめた後、兄を見る。
「…考えたことなかった…。そっか…スポーツ選手か…」
名前がこんなだからか、走るのは風を感じることが出来て好きだ。
だが走ることなんて体育の授業くらいだから…授業の中では好き、それだけだった。
「ほら、ちょうど中学だったら部活もあるし…夢にしなくても、どこまでいけるか挑戦してみたら??」
きっかけは些細なこと。
些細なことは、大きなものへ発展する。
中学では陸上部に入った。一年にして、疾風は駿足を見せつけ上級生をも圧倒させた。
もちろん勉強も厳かにしては駄目だ。部活の厳しさを理由に成績が下がったとは思われたくはない。
負けず嫌いで、意地っ張りな性格は生れつき。
本人は自分なりに頑張っているつもりだった。走って…走って…どこまで走れば兄に追いつけるだろうか。
ただ…疾風のその姿勢は…陸上選手としては認められるものの、周りからの評価は良いとは言えなかった。
一年のくせに…
斜に構えた態度が鼻につく…
付き合いも悪い…
成績も優秀で目立ってる…
最初は些細な噂も、大きく広まる。
たいてい、頭が良くて運動が出来て、先輩よりも有望視されていて、ビジュアルも良いようなパーフェクト人間は良い印象を持たれない。
おまけにこの性格だ。上級生からの「調子に乗るな」にも返す言葉は「用件はそれだけですか」だ。
周りからの評価は求めていない。自分がどこまで高みを目指せるかだ。
友達なんかいらない…いつの間にかそんな風にさえ思っていた。
違う…
追いかけていた兄は、こんなだったか。
もっと楽しそうに、やりたいことに打ち込んでた気がする。
今の自分は…どうなんだろう…。
中学二年の終わり…そう思ったから疾風は家に帰るなり兄を探した。
兄に…相談なんてあの時以来だと思った。
だが、相談の前に兄の翔から…兄弟全員に告げられた告白。
「歌、やめたよ。…歌わない…もう」
なんでアンタがそんなことを言う?!俺が走ってこれたのは、アンタが歌っているから!
怒鳴ろうと思ったが、依月が先に怒り狂いだしたので自分は冷静になれた。
二人きりになって、ようやく聞いた。夕暮れ時の…明かりをつけていない居間は、赤色に染まっている。
「…なんで、んなこと言うんだよ」
「…」
横目で見やると、兄の翔はただ諦めきった顔で虚空を見ていた。
「そりゃあ…一人暮しとか…キツイかもしんねーけど…やめられるのかよ、歌」
「…歌え、ないんだ」
ぽつりと訂正するように声がした。
「最近、さ。歌えなく…なっちゃった。なんかもう…潮時なのかなって」
「…なんか、あったのか?兄貴…」
「ん…ちょっと。色々、ぐちゃぐちゃ…」
「…アイツか?」
翔の口元が少し反応した。あぁ…やっぱりか、と疾風は顔をしかめる。
「だから、言ったじゃねーか…あんな悪い噂の堪えないような不良に関わるなって」
自業自得…その言葉を飲み込む。これ以上は、何も言えなくなった。今言うと、兄は崩れてしまいそうなほど弱々しい目をしていたから。
潮時…
自分も、そうなのかもしれない。求めるべき夢の形がわからなくなって…追いかける目標である兄も立ち止まって。
元々、とってつけたような夢だった。別になんでも良かったんだ…打ち込めるなら。
それに…今年から三年…受験生だ。ちょうど良い。
陸上部は退部した。中学残りの一年は勉強に集中すれば良い。
それで良いんだ。
言い聞かせた。必死で勉強した。
じゃないと、忘れられないから。
やめて、初めて気がついた。走ることが好きだった事に。
いつの間にか、こんなにも…自分から陸上をとったら何もないことに。
きっかけは些細なこと。
些細なことは、大きなものへ発展する。
打ち込めること…それは夢中になりすぎて、見失いがちだけど、やめた途端喪失感を感じるんだと、兄がいつだったか言っていたのを思い出した。
高校に入り、疾風はもう一度陸上を始め。
兄の翔が再びマイクを握ると決意したと同時に家を出て。
疾風が…相棒や、悪友と呼べる仲間に出会うのは、もう少し先の話。